牛も爪切りをしてもらわなければならない?

どうして牛の爪を切らないといけないの?

人間の爪はだいたい一日に0.1mmくらい伸びるそうですが、一般的には伸びたら当然切りますよね。牛も動物ですから、毎日爪が伸びます。野山に周年放し飼いをしていると、自然に摩耗して形が保たれるので、爪を切る必要はありません。ですが、自由に野山を駆け回れる環境にいる牛は少数派なので、一般的には牛舎で飼われていることが多いです。

牛舎内では適切な運動量を確保することが難しく、自然に蹄が摩耗して形が整うということはありません。牛は2本の蹄で数百キロの体重を支えなければなりませんから、人間が蹄を健全な状態に保ってやる必要があります。定期的に伸びた蹄を切り、その形を整える作業を「削蹄(さくてい)」といいます。

牛の削蹄には資格がある

削蹄をするためには、大きな体の牛たちを牛舎から外に連れ出して脚を上げさせて、蹄を削らなければなりません。しかも1頭や2頭ではなく、数十頭、数百頭とたくさんいるので大変な重労働です。人でもいりますし、牛の健康に関わるので知識・技術・経験が必要になります。そうしたわけで、昭和40年から牛削蹄師という資格制度が始まりました。

日本装削蹄協会というところが認定試験を開催しています。グレードは2級、1級、指導級と3つのグレードがあります。資格取得のためには該当級の講習を受け、講習会修了後に認定試験に合格する必要があります。さらに認定試験に合格した後に認定申請を行い、資格認定を受けて始めて「牛削蹄師」になれるのです。

1級は2級の資格取得後4年以上の実務経験が必要で、講習会の受講、認定試験合格、認定申請を経て資格認定を受けることでなれます。指導級は1級の資格取得後、9年以上の実務経験をしたのちに1,2級と同様の過程を経て、資格取得することができます。

2級の講習会は全国巡回方式で毎年5地区(北海道・東北・関東甲信越・中国四国・九州)で開催しているようです。1級と指導級については、開催場所は原則的に関東で1箇所同時開催です。講習会・試験の内容は学科と実技で、2級では実牛を用いての実習となります。講習修了後にそのまま試験があるようなので、受講前に牛の削蹄経験を積んでおかないと合格は難しいかもしれませんね。

どういう人が削蹄師を目指すの?

牛削蹄師を目指すのはどんな人なのでしょうか?牛の牧場で働きたいという方、牛飼いの跡取り、削蹄師専業でやりたい方、獣医さんなどが資格取得を目指すようです。

多頭飼育の農場では、削蹄師さんに依頼するのが一般的ですが、小規模な農家では自前で削蹄することも珍しくありません。跡取りや小規模農家への就職を希望しているなら、その技術は重宝されるに違いありません。また、専業として働くといっても選択肢はいくつかあります。個人開業、大規模農場に就職、削蹄会社に就職など就業携帯はさまざまです。

イチローファームでは削蹄をしているの?

最後に当牧場の牛について触れておきます。2017年9月23日現在、今年で5歳の牛が3頭、1歳になったばかりの牛が1頭いますが、削蹄を経験した牛は1頭もおりません。

成牛の3頭は2歳頃までは牛舎内の部屋で自由に動ける状態で飼養されていましたが、その後は、基本的に1年365日24時間放牧です(お産や体調不良の時は牛舎に移動することもありました)。1歳の牛は生まれた日からずっと放牧地を走り回っています。そんなわけで蹄は自然に摩耗し、人間が手を掛けなくても健康な状態を保てています。

PS
以前、大規模な農場で働いていた時のことです。削蹄の講習会会場に指定されたことがありました。まだプロではない方々の練習台にされた牛たちの中には、乳量がかなり下がってしまった牛たちもいました。また、失敗して蹄が血まみれになり、包帯のようなものを巻かれている牛もいました。

蹄の管理の重要性を改めて認識させられるとともに、(技術を身につけるまでは失敗は避けられないので仕方ないのですが、)怖いなぁと思いました。

さらに怖かったのは、何やら棒のようなものが数本並べられていたので見てみると、牛の脚が並べられていました。おそらく屠畜した牛の脚だけを削蹄の練習用に買い受けたのでしょう。いきなり実牛で練習するよりも合理的ですが、当時の私は軽い衝撃を受けました。。


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