毎年恒例の特別な日
こんにちは。今日はあいにくの雨ではありますが、我が家にとって特別な日です。愛息子のイチロー君が5歳の誕生日を迎えました!好みが変わってしまったようで、大好きだったリンゴをあげても全く反応してくれませんでした泣。でも、他の牛たちが喜んで食べてくれました。また、イチロー君の好きな食べ物をリサーチしていこうと思います笑通常、5歳にもなった種牛は手に負えないくらい気性が荒くなったりしますが、この子は赤ちゃんのときからずっとお世話してきたので、わたしに対しては全く警戒心を持っていません。撫でるときは手ではなく、母牛のように体でスリスリと撫でたり、寂しがるので一緒に昼寝したりもしました。母牛のように舐めてはあげられないので、温かいお湯に浸したタオルで体を毎日拭いてやりました。きれいにするためだけではなく、母子のようなコミュニケーションをとるためです。
運命の転機
イチロー君が生まれたのは、海を渡った愛媛県の牧場です。男の子なので、お肉になる運命でした。広島県の子牛市場に売りに出されて、当時わたしが勤めていた牧場に種牛候補として買われたのが運命の転機です。もしも別の牧場さんに買われていたら、肥育されて2歳くらいでお肉になっていたはずです。同世代に生まれた他の男の子の牛の99%以上は、既にこの世にいません。我々人間の命の糧となってくれました。ごく一部の優秀な血統の雄牛は精子を採取するために種牛として飼われているかもしれません。ですが、実際に雌牛と交尾できるわけではありません。
雄牛の精液の採取には、雌牛の形をした台に人口膣を取り付けたものを利用します。私も見たことはありませんが、発情している雄牛を近づけると射精するようです。雄牛は差し込んだら、瞬間的に射精するので時間は全く掛かりません。採取した精液は小分けにして液体窒素保存されます。それを農家さんや人工授精士さんが牛に人口受精するのです。
恋をし、生まれた我が子を愛する牛たち
通常はほとんど全ての雄牛がお肉になること、優秀な遺伝子を持った雄牛の一部は疑似台で精液を採取されるために飼われていることは說明した通りです。しかし、イチローファームでは自然交配をしています。人間が受精することもありません。柵だけはしていますが、自然というフィールドの中で牛たちは自由に恋愛し、愛を育んでいるのです。イチロー君はお母さん牛を知りません。一般的な酪農牧場では、お産後すぐに母子は分けられます。子どもに情が移る前に引き離してしまわないとお互いが呼び合うからです。また、一緒にしてしまうと子牛がミルクを飲むので、生乳を販売できません。
ですが、当時わたしが勤めていた牧場では、生後3ヶ月間は母子一緒に育てる方針でした。お母さん牛のミルクを直接飲んで、お母さん牛と一緒に過ごした牛たちは落ち着きがあります。お母さん牛も280日間もお腹の中で育んだ子牛と一緒にいるときはほんとうに幸せそうにしていました。
お母さんのいなかったイチロー君は、スティッチと一緒にスティッチのお母さんのおっぱいを飲んで育ちました。生まれた牧場では人口哺乳で育てられていたので、乳母からおっぱいを飲めるようにするのにだいぶ時間が掛かりましたが、なんとか成功しました。生まれてすぐに哺乳瓶になれさせると本能を忘れてしまうんですね。
同じおっぱいを飲んで育った幼馴染のスティッチと、イチロー君の二ヶ月後に生まれたサヤちゃんの3頭で始まったのがイチローファームです。生まれてからずっと一緒に育ち、大人になって愛を育み、やがて子を産んで、家族仲良く暮らしています。それにしてもイチロー君大きくなりました。きっと1,000kgくらいありますね汗。とにかくおめでたいです。これからもイチローファームをよろしくお願いします。
PS
あ、そういえば私の教え子さんからお祝いの果物が届きました。教え子といっても牛関係のことではありませんよ。副業や電子書籍出版のお手伝いをさせて頂いた方です。ありがとうございます。「大切なお子様が5歳の誕生日を迎えられるんですね。おめでとうございます!」みたいなことを言われたんですが、あれ、愛息子には違いないけど牛だって知らないのかも・・・。ま、いっか笑